周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

東北記⑤ 

2015/09/09
Wed. 22:44

その石段の前には、棒(鉄パイプ?)を縛って造られたような簡易な鳥居があった。

もちろん元々あった鳥居ではない。簡易鳥居の脇にたくさんの巨石の残骸が置いてあり、その中におそらく元々の鳥居やその他神社にあった石造物があるだろうことが見て分かる。
鳥居の周辺にはいくつかのパネルが草地の中に置いてあり、見てみるとそれは震災前のその周辺を写した写真であった。写真にはかつての古風で整然とした街並が写っていて、その面影の欠片もない現在地との落差に、にわかにその街並がそっくり消えてしまったことが信じ難くなる。変り果てたとしか言い様の無い景色、そのすぐそばに震災後しばらく山田洋次氏が寄贈した幸福の黄色いハンカチがあったという。このあまりに寂しい景色の中にはためく黄色いハンカチたちは、確かに一筋の慰めになったかもしれないと思った。

真っ直ぐ急斜面を登る石段は、中ほどが津波で流されてなく、やはり簡易なパイプ等でつぎ足されて登れるようにはなっている。その社殿へと続く石段を1歩1歩登ると、その補修された階段上部に津波到達地点の標識があった。石段をなぎ倒した津波はここまで押し寄せて来た。あの日3月11日の津波発生時にこの石段を登って避難した人たちは、いったいどんな気持ちで押し寄せて来る津波を見つめていたのだろう?

そんなことを思いながら石段を登り詰め、少し社殿に向かった右手に、あの日ここに避難した人たちが暖をとるために燃やした焚火の跡が残されていた。
O山が定期的に定点観測して、陸前高田の様子をFBに写真や動画で知らせている同じ場所に立ち、そこから陸前高田の街(の跡)を眺める。かさ上げの土砂を運ぶ音ばかりが止むことなく聞こえ、その景色の茫洋さに反するように、その中に沁み込み埋められた無数の声や暮らし、生そのものの存在が想起され息苦しさを覚える。ふと「心の置き場がない」という言葉が心中に浮かんだ。

高台の奥にある相当に年季の入った社殿は、よく見ると彫刻が中々立派で、ぼくの住む多摩区にある江戸時代築造の神社よりも古く、造りもしっかりしているように思われた。
旧友は「自分はクリスチャンだけれど」と言ってから社殿に手を合わせて拝礼する。その後からぼくも「俺は無神論者だけれど」と言って同じように拝礼する。皆も後に続く。

社殿のある高台からプレハブ小屋の元支援センターが見下ろせて、バンドメンバーの山村君が草地にいた鹿を見つけた。O山の話では野生の猿も居るし、ある時はセンターの前で天然記念物のカモシカが死んでいたこともあったそうだ。人間の生活環境が破壊された跡地の中で、野生動物たちもまた震災後の陸前高田で生きている。

この諏訪神社での一時が強く心象としてぼくの中に残り、それを“かさ上げの街を臨みて”という歌にした。最初心に浮かんだ「心の置き場がない」という言葉を手掛かりに書き出したが、結局この言葉は削った。それをあえて言葉にして歌う意味(特にこの地で)を見出せないのと、それをするとしたらただ自分のためだけの狭量な歌になると思ったから。

でもそう思ったのはきっと、この後ジャズタイムジョニーさんで、ここで暮らす人たちを前に歌ったからだろう。ライブの前にO山にここを案内してもらったことで、ぼくはライブで歌った1曲1曲に今まで感じたことのない言葉の重さを感じながら歌い、そのことをうた歌いとして苦しくも大切な事だと強く思った。自分の気持ちを言葉にして歌うという行為を、今までよりも1歩踏み込んで考えられるようになった気がした。だからぼくは“かさ上げの街を臨みて”の歌詞を、自分の思いや感情を直接現す言葉は極力使わずに、ただ強く自分の心を揺さぶった出来事(見たもの聞いたこと)そのものを書くことに努めた。そういう意味でこの歌は、ぼくにとって今まで書いた歌とは違う新しい歌と言えるかもしれない。

ライブの前にここへ連れて来てくれた旧友に心から感謝したい。おかげで初めての、そして憧れの場所でもあった陸前高田ジョニーさんで、とんちんかんなライブをやる羽目にならずに済んだと個人的に思っている。(つづく)
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この記事に対するコメント

東北記

なかなか読み応えありますね〜。
MIUMIUライブ前の花巻・賢治の足跡(=いわての田園風景の普遍),ジョニーライブ前の気仙沼&陸前高田の被災跡(変わり果てた街)。先に見てもらってからライブをしてもらう事が大切!と思ってました。でないとMcとかも心配だったし(^^;)
ちなみにKoは「見て歩かせて疲れさせなくていい,音楽と酒だけで!」って言い張ってたんですよ〜やっぱり見通せない奴(笑)

スズキ #f3g/b1UA | URL | 2015/09/09 23:27 * edit *

この東北記、当ブログ初の前日下書きして翌日訂正しながらUPという方法で書いてます。なので毎日書いている感じです(笑)。
書きながら思い起こすと、あらためて2泊3日とは思えない充実濃密な旅でした。Koさんの説、元来出不精な私には非常に魅力的(笑)。でもKoさんに案内していただいた一関サイクリング良かったですよ~。

五十嵐正史 #- | URL | 2015/09/10 00:40 * edit *

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