周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ389 

2013/10/11
Fri. 23:53

昨夜は、仕事帰りに劇団チャリカルキの劇場公演第16弾「アザゼルの山羊」を観に行った。

劇場は新宿3丁目駅近くのSPACE雑遊。チャリカルキの公演ではお馴染みの場所。100名程度入る小劇場だがそんなに窮屈感はなく観やすい環境。しかし、この日は劇場正面以外に舞台右サイドにも席があり、何となくトイレの近くで安心する気がしてそこに座ったら、そこは何と役者との距離数十センチの超かぶり付きの席であった。

ぼくが客演した(と偉そうに言うが、劇中ライブで参加させてもらったのです)、夏場の公演ママチャリカルキは、主に居酒屋や喫茶店に出張しての出前公演であり、出演者もチャリカルキのメンバーに客演一人(今年は日和佐美香さん)だが、秋の劇場公演にはたくさんの客演があり、特に今回は演劇素人のぼくでもかなり豪華だと思わせる出演者であった(チャリカルキの3人(ビーグル大塚さん、森耕平さん、菅野さおりさん)+客演8人!)。

開演前のアナウンスで、上演時間が「1時間50分」と言うのを聞いて、一瞬耳を疑ったが同時にトイレの心配と緊張が襲って来て、その中で公演が始まった。ぼくは成人してから今まで、これほど長い時間の劇を観たことがないのだ。

今回の劇の軸になるのが、13年前に起きた女教師による生徒への体罰死事件で、いきなりそれを想起させるシーンから劇は始まり、ぼくの緊張感はさらに上がる。かぶり付きで観る役者の迫力(殊に女教師役の八十川真由野さんの演技は凄かった)は、あまりに非日常な体験であり最初面食らうのだが、これが不思議と時間が経つにつれて身体が慣れ出し、次第にこの上ない快感になって来るから不思議だ。役者の息遣い、表情を凝視しながら観劇していることが極上のぜいたく体験としか思えない。もちろん、それはそのお芝居が素晴らしいからこその話だ。

体罰死事件の責任をあくまで一身に背負おうとする女教師が、有罪となり免職後、現在は日本語学校で外国人相手に日本語教師をしていて、その中国人の教え子(森君のたどたどしい日本語演技は素晴らしかった)が無実を晴らそうと奔走する中で明らかになる、かつての同僚や死んだ生徒の同級生たちが抱えていた闇や、彼らがずっと背負い続けてきたものが、観る者に次から次へと問いかけて来る。

特に元同僚や元教え子の証言がそれぞれ食い違い、二転三転して行く様は羅生門的展開で実にスリルがあった。
ぼくは個人的に、責任をあくまで一人で取ろうとする女教師に共感してしまうのだが、それと対極に描かれる“みんな(狭い範囲の)を救うために誰も責任を取らない”で済むように奔走する教師の存在と演技(さすがのビーグルさん)がまた深くてリアルで、「日本の組織って、実はすべてこのとっても狭い視野での「みんなを救うため」原理で動いているのではないか?」と考えさせる。そう、この公演はとにかく観る側に何べんも考えさせる。

けれど、決して堅苦しい作品じゃない。随所にチャリカルキらしい小ネタもあるし、現在の女教師の働く日本語学校の生徒たちの外人キャラはかなりベタで何とも笑える。
特に中国人役の森君を慕う、韓国人役の宍戸裕美さんはとってもチャーミング!で、二人のやりとりはラブコメ風でもある。しかし、そんなチャリカルキ独自の軽妙さが全く出しゃばることなく、この劇のテーマである「贖罪の意味」をしっかり支えている。これはすごいことだ。重いテーマを軽妙さを持って支える。これはまさにぼくもライブで目指しているところ。

結局、ぼくが思い入れた女教師の責任の取り方、罪の背負い方にも実はさらにその深奥があって、ぼくは「う~ん」と唸るしかなかった。
死んだ生徒の母親役は、アタシの大好きなチャリカルキの看板女優である菅野さおりさんで(と言っても菅野さん含めて出演者の多くが二役演じている)、父親役のかなり芸達者な役者さんとの、闇を抱える夫婦を見事に演じていた。ぼくが初めて彼女の演技を観た時、恋に迷う女性役がとってもハマっていたが、もう母親役もバッチリだ。これからも色んな女性の顔を見せてほしい。

お芝居の後半は、この物語のもう一つのテーマである「愛しさ」が色んな形で立ち現れ、ぼくはもう涙をこらえるのに必死であった。
終演した時、ぼくは「1時間50分じゃ足りないよ!もっと観たい」と心で叫びながら精一杯の拍手を役者たちにかぶり付き席から贈っていた。

6月にご一緒したママチャリカルキとは全然アプローチの違う(この時は被り物ミュージカル仕立てで、テーマは「妊娠」であった)、ものすごく正攻法な演劇で(セットはとてもシンプル)重いテーマを見事に描き演じきった作品であったが、ぼくは両者が根底で繋がっていると思えてならない。それは他ならないチャリカルキの世界観(決して大上段から世界を語らず、あくまで日常の生活の一コマを丁寧に描く)に貫かれ、命の誕生とそれへの愛おしさがまさに共通しているテーマだからだ(脚本家として、ビーグルさんは今絶対ノッてると思う。旬の男だ。映画の脚本家としても活躍しているわけだ)。両方を観ることが出来て幸せだ。そんな劇団チャリカルキは「俺のダチだぜ」と、みんなに自慢したい気分で帰りの小田急線に乗っていた。

今宵のBGMは、ビリー・ブラッグの91年発表の「ドント・トライ・ディス・アット・ホーム」の未発表曲集。
ずっとフィリップ・シェヴロンを聴いていたら、ちょっと辛くなってきてビリーで癒されています。当面はUKおよびアイリッシュサウンドを聴いていたい気分。

BG酒はホワイトハイボールでした。明日はスケジュールに載せてませんが荒川区で観客限定ライブをして来ます!ロケンロール!!

劇団チャリカルキ公演「アザゼルの山羊」は15日まで、SPACE雑遊で上演しています。前売3,500円 詳しくはチャリカルキHPで。
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