周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

47回目を迎えた阿佐ヶ谷あるぽらんキネマ劇場。もう、ここは活動写真ライブの常打ち小屋である。

そして、いつしかこのあるぽらんキネマ劇場は、活動写真弁士片岡一郎君の独演会が恒例となり、不肖私五十嵐が、彼の語る左隣でアンプにつないだギターを抱えて座り、生演奏を付けるのが定番となった。

これまでも片岡君のあくなき冒険心と映画LOVEで実に色々な映画をかけて来たが、今回の1915年作のアメリカ映画の超大作にして人種差別映画として歴史にその名を刻む、3時間を超す「国民の創生」に挑んだのは、片岡君本人にして「決めた後で無謀かもと思い出した」と言わしめた、予想通りのあるぽらんキネマ劇場最大の激闘、熱闘ライブとなった。

一夜明けた今日、いつものように仕事に行ったが、いつものライブ明けの疲労よりさらに次元を超えた身体の芯にべっとりくっついたような、いまだかつて味わったことのない疲労が残っていた。

それもそのはず、2部構成にして途中休憩入れたものの、1部だけで約90分!アタシは画面と片岡君の語りに全神経を集中させながら、ほぼ休みなくシーン毎に違うギターのフレーズを弾く。
テクニックがない分、画面と語りに寄り添って感情を込めて弾くのがぼくのスタイル(たぶん、このやり方は邪道と思う)なので、歌っていないだけでライブをやっているのと同じだ。しかも、MCを入れるインターバルはないので、ふだんのライブの何倍もギターを弾いていることになる。

しかし、当然それ以上に語り続ける片岡君の方が大変だ。なにせこの日彼が用意した筆ペン手書きの原稿(ぼくは彼の直筆原稿が好きで、それを見るとグッと気合が入る。そこにはまさに弁士の魂が宿っている)は、なんと160ページ!ぶったまげた。さすがプロだ。
彼にとってもこの映画は今回が初演であり(現代でこの映画をかけられる活動写真弁士は、彼と彼の師匠だけとのこと)、相当な緊張感を持って臨んでいるのが伝わって来る。

ぼくが(きっと片岡君もあるぽらんの佐々木さんも)とにかく不安だったのは、この長丁場の映画をお客さんが耐えられるかであり、殊にぼくのギターが単調でつまらない演奏になることでお客さんが退屈してしまうことを一番怖れた。

しかし、1部をやりながら満員のお客さん(これがまずうれしかった)が、スクリーンに釘付けになり集中している様子が後方から見えて何となく手応えを感じた。
それに乗じて、本来無声映画の伴奏者はやらない、伴奏者が歌ってしまうというシーンもやり切り(2部にももう一回やった)、リンカーンが暗殺されたシーンで無事1部を終えた。

束の間控室に二人で戻ると同時に、思わずへたり込んでしまうほど1部だけで疲労した。

後半2部のことは正直、あまり鮮明に記憶していない。もう、集中力が切れそうになることへの不安が1部の比でなく、最後まで己との戦いの中で必死に弾いた。ギターの弾き過ぎでもともと脆くなっている右の人差し指は指弾きのせいで途中からかなり痛くなり、中指と交互に使いながら弾いた。左手もギュッとギターの鉄弦と指板を押さえ続けているのでどんどん痛くなり、はっきり言って1部より余裕は無くなっていた。

しかし、2部で白人至上主義を振りかざしKKKの誕生と虐殺を英雄的に描く段になると、ぼくも狂気を奮い立たせるように弾いた。もちろん冷静であったが心の中では「おかしいぞ、アメリカ!ふざけんな、アメリカ!」と叫んでいたと思う。

ラストは、オープニングと同じウディ・ガスリーの名曲「我が祖国」をつま弾いた。これはぼくなりの最大の皮肉を込めたつもり。
“この国は君の国 この国はぼくの国 カリフォルニアからニューヨークまで セカイヤメ杉の森からメキシコ湾流まで この国はみんなのために作られたものだ”
KKKが黒人を粛清したことによってアメリカに統一と秩序、平和をもたらしたとするこの超大作には、実に似つかわしいアメリカの歌だと思う。

それにしてもこの映画、内容はともかく実に良く出来ている。確かに特に1部はかなり史実に基づいて描かれているのが分かるし、戦闘シーンも大迫力であり40年後のクロサワ映画をほうふつさせるほどだ。
そこが実ににアメリカらしい。嘘やファンタジーを、事実を織り交ぜてたくみに客を錯覚させる手法は、ディズニーにもしっかり受け継がれているアメリカの一つの伝統とも言えるだろう。

もちろん、後にこの映画を多くの人が酷評したのも、上映禁止にした州もあったこともまたアメリカの一面ではある。が、ぼくにはこの力の正義、力による平和を、都合良くキリストを持ち出して実に素朴過ぎるというか、単純すぎるほど信仰してしまう思考が、やはりアメリカの真髄のような気がしてならない。
もちろん、だからって日本が良いわけない。日本は日本で相当阿呆であるのは言をまたない。

この映画を、現代の日本人の活動写真弁士が彼自身の訳した言葉で語ることに、ぼくは疲労以上の大きな意義とおもしろさ楽しさを感じたし、それに伴走出来たことは望外の幸せであった。
疲労はじきに回復する。けれど、この映画をやり切った達成感はしばらくぼくの心身を満たし続けることだろう。

10月から年末までドイツへ公演の旅に出る片岡君の無事と充実の日々を祈りつつ、再会を楽しみにしたい。
片岡君、心からお疲れ様!

今宵のBGMは、ビリー・ブラッグの91年発表の「ドント・トライ・ディス・アット・ホーム」。どこか切なく懐かしいメロディーの歌が満載の名盤。元ザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーが参加。
秋の宵に沁みる歌と音楽。さぁ、ぼくも28日のソウブラライブに気持ちを切り替えなきゃ。

BGドリンクはトマトジュースでした。ではまた、ロケンロール!
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