周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ383 

2013/09/20
Fri. 23:49

昨夜の満月はきれいだった。

前夜よりさらに金色がかって、仕事帰り団地の前の森の上に浮かぶ月を、ぼくはしばらく立ち止まって見つめていた。
そうしたら、左手の我が家の棟から聞き慣れた子どもたちの声。
部屋の中で騒いでいる声が、外にまで思いきり聞こえているのだった。きっと、ぼくが弾くギターの音もこうして聴こえているのだろう。実に賑やかな我が家である。

そうやって昨夜満月を見つめてから、実はずっと一人の歌うたいだった男の事を思い出していた。
なぜ月を見て彼を思い出したのだろうと考えつつ、久しぶりに彼の遺作となったCDを引っ張り出したら、果たして彼の歌に「お月さん」という歌があった。この歌の記憶がぼくの中に沁みついていて、中秋の名月を観た時にそのぼくの記憶がぼく自身に思い出させたのだろう。いや、もしかしたら彼がぼくに思い出させてくれたのかもしれない。

その男の名前は萩原征一、通称“ハギー”。2000年5月29日33歳で亡くなった。
病気を抱えていることは聞いていたが、命を奪うほどの難病だとは知らなかった。亡くなる直前に完成したセカンドCD「ひと握りの種をもって」を聴けば、そこには永遠に年を取らない瑞々しいハギーさんの声があり、愛にあふれた歌がある。

“真っ白な お月さんが こっちを見ているよ 
 お月さんは いつでも 笑って見ているよ
 一人ぼっちのさびついた 帰り道でも
 淋しくなんかないさ だってあんたが ずっとオイラを見ているから
 あんたがオイラを ずっと見ているから

 オイラ願ってみたんだ 愛だけにしてくれって
 ずうっと祈ってみたんだ 愛だけもたせておくれ
 そしたら やっぱりお月さんは笑って 笑って優しく言ったんだ
 「全てを捨てなさい 思いやる心だけ残して」
 「全てを捨てなさい 慈しむ心だけ残して」 ~ハギー「お月さん」より~”

あらためて、「あぁこんな歌は俺には書けない」と思うと共に、やっぱりハギーさんにしか書けない、唯一無比の歌と世界観だと思う。この人が歌ったからこそ嘘っぽくない。ぼくの書く歌は、ハギーさんと出会った時も今も「それはウソだろ~!」と、物事や世情、スローガン、マスの反対側から単独攻め込むような歌。

しかし、ハギーさんはまったく裏表のない歌の通りの人だった。
特に13年前に彼を紹介してくれたMというミュージシャンのような、エコや反原発反権力を称して胡散臭いラスタファリの真似事をしていたヒッピー崩れの人たち(たんにだらしない人が多かった)に比べて、彼は優しく誠実なアコースティックパンクロッカーだった。

ハギーさんとは2回一緒にライブをして、当時の我が家に一晩泊まったこともある(広島の、自分が彼女と借りている借家と同じ造りだとうれしそうに言っていた)。
93年から使っている手書きの住所録には、今も彼の直筆の連絡先が書いてある。

彼は愛する人との普通の暮らしをなにより愛していたと思う。
彼の遺した歌には、後に結婚した彼女と亡くなる直前に誕生した娘への汲めども尽きせぬ愛が満ちている。

ぼくが団地での家族との暮らしを愛し、“暮らしという名のラブソング”を書いてしばらく経ってから、歌詞の中にハギーさんの名曲“みそしる小唄”と同じフレーズがあることに気付いた。無意識のうちにパクっていたのだ。

“茜色した帰り道 オイラ口笛吹いてさ
 今日も汗まみれで働いて 家路をたどるよ
 お前の元へ帰ろう 温かい家へ帰ろう
 夢のかけらはほったらかしてさ 丘を越えて一目散
 毎日毎日 忙しい日は続くけど
 夕焼け空とお前の笑顔で 全ては満たされる

 「ただいま」「お帰り」みそしるの匂いがして
 ああ これが幸せの味かとしみじみ感じた
 「お帰り」「ただいま」オイラの愛しい女性よ
 今日もお疲れさん そしてありがとう ~ハギー「みそしる小唄」より~”

ぼくも彼と近い視点で歌が書けるようになったのだろうか?彼と家族のことをライブで歌い合いたかった。ホントにカッコイイ男だった。
二つ年上の、でもずっと33歳のままの兄貴分。これからもあなたを忘れない。偉そうなことを一つ言わせてもらえば、あなたの分まで歌いまくるつもりです。

今宵のBGMは、ハギーさんの2000年発表の遺作「ひと握りの種をもって」。素晴らしいアルバム。彼の世界観が詰まった名作です。驚くことにまったく色あせない、現在にもぴったり当てはまる普遍的な希望の歌たち。脱帽!

BG酒はホワイトハイボール、さぁいよいよ23日はあるぽらん無声映画ライブ、その前に1泊2日で実家に帰って来ます。ではまた、大作「国民の創生」でロケンロール!
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この記事に対するコメント

この日記読んでいたら、自分が昔書いた詞を思い出しました。アミューズメント会社の依頼で書いたんだけど、結局オクラ入り。
気に入ってたもんでせめて五十嵐くんに見てもらおう。貼らせてくださいませ。


月よ泣いてくれ 


心が折れそうにつらい夜も
呼び出せるようなヤツもいない

ひとりで歩く 暗い帰り道で
顔をあげたら ふいに優しい光

月よ泣いてくれ こんなやりきれない夜には
俺についてくるのはお前だけ
ああ まだ雲にかくれないで

勝つか負けるかに ただ明け暮れて
気がつきゃ誰もそばにいない

そんな人生で 別にかまわねえと
覚悟決めても 胸にすきま風吹く

月よ泣いてくれ どうせ一瞬の夢だから
夜が明ければ俺はまたひとり
ああ もっともっと輝いて

律子 #- | URL | 2013/09/21 14:11 * edit *

僕も今月は、故風見辻造が頭から離れません。

江上正 #- | URL | 2013/09/21 23:36 * edit *

律ちゃん、良い詞だねぇ。ちょっとマイナー調のメロディーが浮かんできそう。
オクラ入りはもったいない。
月は古より人にもっとも歌われ(せ)てきた存在ですね。
ありがとう!

江上さん、風見さんの写真を背に、ご遺族を前にして歌った「歌わずにいられない」を、ぼくも忘れることはないと思います。その瞬間だけの特別なライブでした。

五十嵐正史 #- | URL | 2013/09/22 23:59 * edit *

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