周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ332 

2013/04/16
Tue. 23:08

今日は午前中、施設の利用者2人と共に請け負っているローカルなタウン誌配布作業に従事する。

3人で手分けして、割と厚めのタウン誌1,000部をリュックに詰め込み、職場を出てから10分近く歩いて配布地に到着すると、2人に地図と配布範囲を確認してぼくは不足した時の追加に備える。

前立腺肥大の影響か頻尿のぼくは、早速公園の公衆便所で用を足し外に出てみると、ベンチに一人のおばあちゃんがチョコンと置物みたいに座っている。
良く見ると、それは10年ほど前までぼくの働く作業所に通所していたWさんであった。

Wさんは足腰が弱くなったことで、障害者の通所施設である作業所から、介護を受けながら生活する高齢者のグループホームとデイサービスの方の利用に移行していったのだった。
でも、その後も手紙のやり取りは続き、この春に蒲田の施設から作業所の近所であるUの木地区に転居したという便りをもらっていたので、もしかしたらそのうち街でばったり出くわすかなと思っていたところにドンピシャであったのだ。

ぼくが「Wさん!」と声をかけると、こちらを向いてすぐ以前と変わらぬ口癖で「あら、いやだ。どうしたの!?」と返してくれた。
それから一しきり公園に二人きりで同じベンチに座って、近況を報告し合った。
Wさんは、痴呆もほとんどないように見えて、こうして単独での外出を許され毎日毎日この公園のこのベンチに座って、午前中を過ごしていると言う。趣味はデイサービスでのカラオケとのこと。

現在75歳くらいと思われるWさんは、ぼくが作業所の職員に成り立ての頃の実に思い出深い利用者であった。
エピソードはいくつもあるが、もっとも忘れ難いのは、ぼくが2年目の夏におふくろを亡くし、その忌引き休暇明けの初日、ぼくはおふくろの居なくなった世界にまだどうにも現実感を持てず、自分の足元がなんだかおぼつかないような感じで朝出勤したら、突如Wさんが両手一杯の紙袋に詰めた生活道具や着替えを抱えて作業所に来て、「五十嵐さん居る!?アタシこれからN病院に入院するから連れて行って!!」と大きな声でぼくを呼んだのだ。

ぼくはびっくりしながらも、Wさんが自分で統合失調症の悪化を自覚し、これ以上アパートでの一人暮らしは無理と判断して自分で入院を希望して来たことが分かり、急いでN病院に連絡を入れて事情を話し、当時まだ存命だった院長に「とにかく連れて来なさい」と言われると、二人で暑い中荷物を持って(ぼくがほとんど持ったけれど)電車を乗り継ぎN病院へ行った。

結局ぼくからも院長にお願いして、本人の希望通りその場で任意入院が決まり、ぼくはホッとしてWさんに別れを告げ一人また職場へと戻ったのだが、Wさんのことで夢中になっている間に、ぼくはすっかりおふくろのことは忘れて、自分の今居る現実世界にしっかりと足を着けていることに気付いた。それは紛れもなくもうおふくろの居ないぼくの生きる世界であった。そんな忌引き明けのぼくを、お構いなく引っ張り回してくれたWさんに心から感謝した。

その後も割と症状の激しく出てしまうWさんとは、実に色んなドタバタ劇を繰り広げたのだが、そのどれもが精神障害と言われる人たちと関わり、その安易にマニュアル化など出来ない生活支援を担う作業所の一職員としてのぼくを鍛えてくれた、大事な経験となった。

そのWさんが、今毎日公園のベンチに一人チョコンと座って静かにジッと過ごしている様子を思うと、ぼくは何ともうれしい気持ちになって来る。
「ホンとWさん、元気そうで良かったよ~」とぼくが言うと、Wさんはしばらくじっとぼくの顔を見つめてから「あなた白髪増えたわね~。まだ70になってないでしょ?」なんて言う。
ぼくは苦笑しながら、「もうすぐ44歳です」と言うと「あら、まだ若いのにね~」だって(笑)。

また時々公園に行って、Wさんに会いたいと思った。

今宵のBGMは、ザ・スミスの86年発表の名盤「ザ・クィーン・イズ・デッド」のLP。
とにかく1曲目のタイトル曲が、今聴いてもその冷徹な怒りとテッテ的な皮肉と美しさに満ちた詩と、繊細なのにめちゃくちゃ破壊的なサウンドにゾクゾクする。うん、80年代は確かに不毛じゃなかった。
“女王は死んだんだ、みんな 危なっかしい立場にいるってとっても寂しい事なんだよ 体をボロボロにするパブをやりすごし教会もやりすごす… 奴らはみんなの金が欲しいだけなんだ 女王は死んだよ、みんな 人生は果てしなく長い 一人ぼっちだったらね”
訳詞はもちろん中川五郎さんです。

BG酒はホワイトハイボールでした。ではまた、ロケンロール!
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