周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ302 

2013/01/22
Tue. 23:34

中村正義の映画のことを書いた翌日、つまり昨日(21日付)の東京新聞5面の「私説」欄に、ちょうどこの映画のことが書かれていた。

ぼくは、映画を観てから彼の言動がさらに気になり、97年の没後20年を機に刊行された正義の書いた文章を集めた本「創造は醜なり」を、久々に引っ張り出して読んだ。
帯の田島征三氏の言葉にあるように、ページをめくると毒のある攻撃的な怒りの言葉たちがいくつも眼に飛び込んでくる。
この本を初めて読んだ時(30歳になる前だったろう)は、色々な顔を見せる彼の描く絵と違って、あまりにストレートな負の感情ほとばしる言葉たちに、実は少し引いてしまった。
同じように、最近曲にしてライブで歌っている詩人金子光晴氏の「反対」という詩も、とにかく右も左もみな反対だという内容に、20代の頃のぼくはやはり「それでは身もふたもなかろう」と分別臭くも感じ、敬遠したのだった。

その頃は個人的に心情は分かっても、世間に理解を得て一定の力(この場合たいてい数である)を持つには、どこかに立場の違う相手をも包む包容力がなければならないなどと、若くして大衆運動をかじったせいなのか、戦略的にかそういう言説を求めていたきらいがあった。

それがなぜか40代になって、まったく抵抗なく、直截な怒りと、共感、共闘をあえて求めないむき身の言葉に共感出来るようになったのだ。
これはおそらく、障害者自立支援法との7年に及ぶ戦いと無関係ではないと自分では感じている。

中村正義は、生涯、かつて自らも属していた日本美術界を牛耳る「日展」への怒りと憎悪をむき出しにして描き、発言し、行動し続けた。
その極みが、晩年命を削って取り組んだ、75年11月に自ら事務局長となった東京展(岡本太郎や寺山修司らも参加)を、あえて日展の開催時期にぶつけて同じ東京都美術館で日展優位開催への不公平告発署名と併せて開催したことだ。

映画の中で正義は、いたずらっ子のような目で明らかに「ざまぁみやがれ!」という風で、「あえて日展にぶつけることに意味がある」と語り、芸術院に所属する画家の税金から支払われる不当な年金や叙勲についてもバッサリ批判する(このシーンは強く印象に残っている)。そこには「絶対許さねぇ!」という揺るがぬ感情と意志がみなぎっており、その態度(観る人によっては大人げないと映るかもしれないし、私怨と感じるかもしれない)に40代のぼくは、全幅の信頼と大人の人間としての真っ当さをビンビン感じるのだ。

事務局長としての正義は、必ずしも民主的でなかったことや、大勢と共同して事に当たることが下手であったことを、当時正義のフォローに苦労したであろう田島征三氏が、実に懐かしそうに愛情を込めて語るシーンもなんだか涙が出そうになるほど愉快である。

ぼく自身は、福祉の仕事をしながら、法を否定すると同時に法になびく同業者を怒りに任せて批判し続けていることに、自問自答を繰り返しては時々どうにも虚しくなってしまう。
けれど、そんな時に“まっとうに怒り続け”た中村正義の存在は誰よりも勇気をくれる。
なにより、正義はその“怒り”を源泉に(もちろんそれだけではない)雄弁な素晴らしい作品をたくさん描いた。

映画でも出てくるが、日展の元師匠による圧力で発表の機会を奪われていた正義が、日展の牙城でもあった銀座三越で、店の担当者の尽力もあって起死回生の個展を開催した時(そのエピソードも感動的)、彼は日展を脱退してからトレードマークになっていた原色を大胆に使ったポップアート的画法をあえて使わず、日展のどの画家も敵わないような技術に裏打ちされた、精密で美しい風景画のみを描いて出店して話題となった(出店した絵は、個展開催二日で完売したという)。ここでも「ざまぁみやがれ!」という正義の声が聞こえて来るし、とにかくロックな人である。

その時出展された、主に雪景色を描いた、月や山、葉を落とした木々の静謐な透明感ある美しい絵は、数ある中村正義の絵の中で、ぼくも大好きな風景画である(彼の風景画はどれも素晴らしいが)。

“現代、これほど大きなひずみの中で、怒りをもたない人間は、無知か、卑屈か、卑怯者か、いずれにしても偽物です。反骨精神とは、無知と卑屈におかされない正常な人間の本能のようなものです。”~中村正義「反骨精神」より~

今宵のBGMは、パティ・スミスの2000年発表の「ガン・ホー」。
94年にロック界に復活してからの最高傑作だと思う充実のロックアルバム。この作品からはっきりとアメリカ政府を批判する内容の歌が出て来たように思う(当然、前から反権威的ではあったが)。
この時まだNYテロの前、テロ後彼女は敢然と「反ブッシュ」を掲げて歌った数少ないミュージシャンの一人。
さぁ、明日は10年ぶりのパティ・スミスのご尊顔を拝みに行くぞ~!あぁ、もう泣きそう…。

BG酒はホワイトハイボールでした。ではまた、ロケンロール!


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この記事に対するコメント

「中村正義〜父への旅」を東京都写真美術館で観賞。予想より能弁な方で茜ちゃんと同じ感想です。
エンドロールの五十嵐さんのお名前,同行の家族が見つけました。
私も病を得た後の雪景色の風景画は好きです(銀座三越展で完売の)。あとは源平合戦の絵,昨春に練馬美術館で見た本物は凄かった!
21歳で敗戦して画家宣言〜それ以前の戦時中を時代背景も含めて掘り下げて欲しかった点が残念。→そう小松と注文つけたら,同行の息子は「映画の視点が本人じゃなく娘さんだから仕方ないのでは」と(^^;)

スズキ #f3g/b1UA | URL | 2013/01/23 17:36 * edit *

中村正義の映画、観ていただけてうれしいです。
正義美術館の春の展示、ぜひ一緒に観に行きましょう。
森も案内しますよ!

五十嵐正史 #- | URL | 2013/01/24 23:16 * edit *

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