周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ704 

2016/08/30
Tue. 22:45

今夜、明らかに森の虫の音が変わった。

団地の目の前にあった警察官庁舎が取り壊されて、広大な更地の向こうさらに視界が広がった森は、無数の鈴の音を鳴らしたように、秋の虫たちが主役に取って代わった。毎年のことながらこの転換は実にドラマチック。それでもまだ微かに聴こえる、街路樹で重たそうな鳴き声を上げているアブラゼミは、真夏はあれほどうるさくもっとも風情の無い鳴き声であったのに、この断末魔の声は何とも哀愁を誘い、コオロギたちに後を託すメッセージのようでもある。

この団地に越して来た10年前、仕事帰りに読売ランド前駅からなだらかに続く団地への坂道を上りながら、初めて森が鳴るのを聴いた時はその幻想的な音に驚き魅了された。それはかつて、実家のある旧関宿町で人の会話が聞こえなくなるほどであった夜のカエルの合唱を思い出させた。
そんな幻想的な夜の帰り道を楽しみ出した頃、ちょうど障害者自立支援法の嵐が吹き荒れ出し、大田区内に当時10数か所あったぼくの職場でもある小規模作業所界隈で、自立支援法について学び合い情報交換しようという「精神障害者の地域生活を支え合う会」というのが某同業者から呼びかけられ、ぼくにも声がかけられた。しかし、その会の姿勢が自立支援法に抵抗するものではなく、いかにしてこの悪法に上手く乗るかが目的であることは某同業者からの話でも、参加する小規模作業所(ぼくら以外全所参加)の中に積極的に自立支援法下での金儲けを目論む者が居た事でも明らかだったので、ぼくは断固として参加を拒否した。

その時電話での某同業者とのやり取りの中で、断固拒否するぼくの返答に激高した某氏は、喚くように「なぜあなたはみんなと協調出来ないのだ!?」「どうしてせっかくみんなで協力し合おうとするものを邪魔するのだ!?」と何度も言ったものだ。ぼくは「間違っているものに参加する理由はない」と突っぱねたのだが、どこまでもおそらくこの大田区でぼくが働く限り、この虚しい平行線がずっと続くのだなと思うとどうにもやりきれなかった。
現にその某氏とその団体は、ぼくの予想通りその後自立支援法に尻尾を振りながら積極的になびいて行き、某氏は大田区の自立支援協議会の常連となって現在に至る。もちろん、そんなことはどうだって良い。そんな協議会はぼくにしてみればクソッタレの集まりに過ぎない。

そんな虚しいやり取りを終えて、大田区で働いて行く事の絶望を抱えながら、降り着いた小田急線の駅から団地へ歩くと、例の森を鳴らす虫の声が迎えてくれたのだ。ぼくはまるで虫の声が、自分を家族の待つ古い団地へと誘ってくれているように感じ、「この道で良いんだよ」「こっちで良いんだよ」と言ってくれているように思え、ぼくに我が道を行くことの確信を与えてくれた。それは実に不思議な体験だった。秋の虫の声に、ぼくは同業他者の甘言や嫌味の何十倍もの確かな「声」を聞いたのだった。

またそんな季節がやって来た。ぼくは今も「こっちで良いんだよ」と言ってもらえている。

今宵のBGMは、大好きなモダンブルーズギタリスト&シンガーのロニー・ジョンソンの1960年発表の「ブルーズ、バラッズ&ジャンピンジャズVol.2」。これからの季節にピッタリな粋でどこか哀愁漂うサウンド。大好きロニー・ジョンソン!

BGドリンクはトマトジュースでした。ではまた、ロケンロール!
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2016-08