周辺暮らしのロケンロール

関東を中心に活動中のごちゃまぜロックバンド、五十嵐正史とソウルブラザーズの公式ブログ

ロケンロールライフ187 

2012/03/31
Sat. 22:49

今日は、茜と二人で念願だった練馬区立美術館へ、“日本画の風雲児「中村正義」新たなる全貌”展を観に行く(葉生、波留、母ちゃんは、近所のお宅へ白玉団子作りに出かけた)。

左腕を骨折して以来、茜はその腕を吊った姿を近所の人に見られて、色々声をかけられるのがわずらわしいらしく、また自分のその姿が気恥ずかしいらしく、外に出るのを嫌がり、家の中に引きこもり気味であったので(何やら気難しい年頃であります)、父は風呂に入れない娘の髪の毛を風呂場で洗ってやりながら誘い続け、彼女も好きな中村正義の絵であるし、見知らぬ街に出かけるということで、首をたてに振ったのであった。

そんなせっかくの週末外出なのに、春嵐の吹く天気で電車が停まったり遅延したりで大変であったが、ようやく昼過ぎに西武池袋線の中村橋駅に着き、改札を出てそこからすぐの練馬区立美術館を見つける。

いつも通っている、アトリエを改装した小さな中村正義の美術館でしか(そこがぼくが一番好きな美術館)、今まで中村正義の絵を観たことが無かったので、練馬区立美術館の入り口に中村正義展の大きなポスターが貼ってあるのを見つけた時は、思わず茜と二人して「こりゃすごいな」と感嘆の声を上げた。

今回の展覧会は、地上2,3階にあたる部分が展示室となっている美術館内に、なんと200以上の作品が展示されていて、最初期の作品から最後の絶筆までが時系列に並べられ、30年に及ぶその画業の、ロックとしか言い様のない変貌の軌跡がとても良く分かるようになっていた。

毎回テーマ別に企画されている中村正義美術館での展示の、まさにアトリエにお邪魔させてもらうような気楽さに比べて、こちらはまさに“全貌展“の名にふさわしいボリュームである。

入館料が小学生はタダなので、大人500円だけ払ってじっくり時を忘れて絵に向き合った。
あまりにゆっくり観る父に(時折戻ったりもする)、茜は後半しびれを切らし気味だったが、それでも二人して約2時間あれこれ絵について語り合いながら観た。
それもそのはずで、15年以上美術館に通っているぼくでさえ、今回初めて観る作品が多く(その多くは中村正義の故郷である豊橋美術館や個人所蔵)、しかも広い美術館ならではの巨大な作品がいくつもあって、しばし、絵の前に立ちすくんでしまうものばかりだった。

日本画の優等生としてスタートした初期の、日展特選候補になったという大作「夕日」は、田園風景を染める夕日の色が実に見事で、水田までが茜色に染まっているその絵の前に立つと、本当にその風景の中に自分が溶け込む感じがする。

結核を病んだ50年代の自画像群の中で、今回初めて観た鉛筆で書かれた自画像は、つげ義春氏が氏の漫画に描かれる自分とおぼしき主人公にそっくりで、思わずつげ義春氏は、中村正義の絵を観ていたのではないかとさえ思った。

若き日展のエースという地位に嫌気が差し、その保守的な画壇へ次第に批判精神を盛り込んだ挑戦状を叩きつけて行く作品達は、観ていて手に汗握った。
改めて思ったのは、あくまで美しい上っ面の日本を描き、描かせようとする日展に対し、中村正義は、その絵に庶民の現実の生活臭を、日本人のどうしようもない醜悪さやそれをも内包して行く文化をありのままに描こうとして行ったのだということ(正義が日展脱退後に受けた陰湿な嫌がらせについても説明があり、そういう輩の描く日本が本当に上っ面なものであることを図らずも証明している)。
だから、正義の描く風景はその下で暮らす人を思わせる。正義の描く人物はその情動が迫って来る。けれど、決してドギツクない。狙っていない。例えポップアート的な手法を取り入れてもポップじゃない。

それはどれも、あくまで中村正義の描く日本画なのだった。
ゆえに、今回の展覧会のサブタイトルが「正義参上!これが日本画だぁー!」なのだ。

そして、寺の依頼で描いたという「八大童子」には、60年安保で権力に立ち向かう若者の姿を童子に託したり、水俣病を告発する「何処へいく“呪詛(世界に告ぐ、そのⅡ)”」や、こっけいでずるそうな顔つきの権力者達の背後に消え入りそうな庶民を描いた「おそれA(不安/おそれ)」と「おそれB(不明/おそれ)」の連作など、常にその絵は内面を描くだけでなく社会を見据えていた。この当然の如く社会を見つめる視点が、ぼくが中村正義が好きな理由の一つでもある。

途中、ビデオコーナーで正義美術館の館長である中村倫子さんの「父を巡る旅」という映画の製作風景を観る。
倫子さんが、語る「父はいつも忙しそうで多くを語らなかった。けれど、自分はそんな父の生き方を見て育ちました」という言葉を観てジーンと来た。

観終わって外に出ると、茜がぜひ感想を書きたいというので、二人してアンケート用紙を記入する。茜が書いたのを覗くと、いつの間にかずいぶん字が上手くなっていることに驚く。はっきり言ってぼくの字よりキレイだ。
図録や、新しい絵柄の絵はがきやらを購入して帰路に着く。

午後2時を過ぎて昼飯がまだだったので、西部池袋線ホーム内のドトールに入ってミラノサンドを二人で食う。
父はかれこれ15年以上ぶりのドトールであった。茜は大喜びで片手で起用にサンドを掴んで食う。足らずにレタスドックも食う。
まぁ、マクドナルドよりは良いか。

帰りも不穏な天気の中、山手線、京王線を乗り継いで帰った。
明日までが会期のこの展覧会に行けて良かった。近々、現在開館期間中(3月~5月)の中村正義美術館に行って、館長さんにぜひ報告しよう。

今宵のBGMは、ザ・ポーグスのギタリストであるフィリップ・シェベロンがリーダーのバンド「ラジエーターズ・フロム・スペース」の2005年発表のアルバム「トラブル・ピルグリム」。先日のポーグスライブで途中トイレに行った際、物販コーナーに売られているのを見つけて買ったもの。これ、今回の来日に合わせた日本盤仕様になっていて、Tシャツとステッカー付!
フィリップがポーグス以前の70年代から続けているバンドということで、B級パンクバンドなどとも言われているそうだが、確かに音は良い意味でチープで、でも楽曲が良いし何よりサウンドが潔くてかなり琴線にふれて来る逸品。特に4曲目の内容を問うまでもない「ジョー・ストラマー」というタイトルのカッコイイロケンロールナンバーが素晴らしい。フィリップの優しいけれど、熱のこもった声にホロっと来る。
まだまだポーグスライブの余韻は終わらない。

BG酒はホワイトハイボールでした。ではまた、ロケンロール!
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